ペンホルダー(Pen4lder)、開発秘話

ペンホルダー(Pen4lder)はこのようにして、生まれた。苦労しました。

目次

試作前のアイデアづくり

開発前夜、ヒントは長崎にあった

2016年11月、当社代表は、手帳社中の企画で、「手帳!展」(ててん)を石丸文行堂さんで行うため、長崎の地を訪れました。

石丸文行堂さんは、長崎市内にある老舗文房具店です。

ここで、当社代表はあるシステム手帳ユーザーに出会いました。お話をすると、、、

 

「システム手帳のバインダーには、1本しかペンが挿せない。また、貴社HIRATAINDERはペン挿し自体がない。結果、私はペン挿し用のプラスティックリフィルを工夫して複数本、バインダーに挟めるように工夫している」

 

とのこと。写真は掲載しませんが、素晴らしい工作でした。

 

HIRATAINDERにはポケットがない
HIRATAINDERにはポケットなどがない

日頃、「HIRATAINDERに付属するオプションをそろそろ何か考えていかないと」と思っていた私はこれに感動しました。

 

写真のとおり、HIRATAINDERはその平たさを追求するために、ポケットなどが一切ついていません。先のシステム手帳ユーザーさんからの指摘のとおり、ペン挿し自体がありません。

 

シンプルさを追求した結果ではあるのですが、システム手帳は「オーガナイザー」と海外で呼ばれるだけあって、皆さん、いろいろなものを挟んで持ち歩きたいものです。その気持ちには応えられていなかったのです。

そこで、多数本、ペンを挿せるリフィルをプラスティックのようなものではなく、少し高級感のある革で作れないかというアイデアが生まれました。この時はまだどんな構造にするかといった考えはほとんどなく、ただ漠然とそういうリフィルが作れたらいいなという程度でした。

 

手書きでデザインを書いてみた

Pen4lderの初期デザインの手書き写真
Pen4lderの初期デザイン

実は、その後、3~4カ月ほど、別の仕事で忙しい時期が続き、このペン挿しのことを進められないでいました。が、ある時、急に思い立ち、手書きでノートにデザインを書いてみたのです。

 

写真は、その時に書いたもの。こちらがほぼ初期バージョン。

実は、現在の最終製品はこれにかなり違い仕様になっているのだから、驚きです。

 

写真にある大きさをご覧いただければわかりますが、当初からバイブルサイズのシステム手帳に挟むことを予定しており、高さが170mm、横幅が96mmでした。全体の周囲にミシンを入れて、ちょうど真ん中あたりにゴムをつける仕様でした。

 

ただし、最終製品とは多少形が違います。ゴムの幅と付け方、それから周りの形が違うんです。この時点では、どんなゴムを使うかとか、そういうことはまだ全然決まっていませんでした。

 

 

HIRATAINDERを製作している工場に相談にいった

Pen4lderの横からの予定図の写真
Pen4lderの横からの予定図

革で作ることを予定していたので、早速、HIRATAINDERを製造してもらっている工場に相談に行ってみました。工場の社長と話していると、また新しいアイデアが生まれるのではないかと思ったからです。

 

上から見た図を手書きで書いていたのですが、横から見た図も書こうということで書いたものがこの写真です。当初から、ペンを挿すところは4つを予定していました。ただ、一カ所だけ太いペンを挿すことを想定して太めにしていたのです。

 

さらに、ゴムではなく、ペンを挿すところも革を考えていました。しかし、ここで工場の社長から「革でゴムを巻き込んだりもできるよ」と提案を受けました。が、採用しませんでした。なぜなら、革にしわが寄ってしまい、ペンが挿しにくくなることが予想されたためです。

 

相談した結果、画像のとおりのものを作ってみることになって試作に手を付けました。

 

試作品の作成と事件~ISOT

試作品ができたが、、、

Pen4lderの試作品(2)の写真
Pen4lderの試作品(2)

私が当初描いた手書きの絵と、工場との話し合いで決めた仕様で試作品を作ってみたものの、これが大失敗(笑)。全然話にならないものができてしまいました。何せ、ペンがとっても挟みにくい(笑)。

 

最大の原因は、ミシンを入れるところでした。ゴムを切り分けるために合間にミシンを入れるような仕様にしていたわけですが、これがいけなかった。ペンが入りにくくて使い物にならなかったのです。

 

そこで、写真のように、ゴムの仕切りにミシンを入れるのをやめて、上下に二カ所、ゴムをつけました。こうすれば、ペンもぐらぐらしないし、入れやすいと踏んだのです。実際、写真のようにペンが数本入るような仕様になり、これはいいぞとなりました。

 

が、ここにも落とし穴があったのです。

Pen4lderの試作品(3)の写真
Pen4lderの試作品(3)

ゴムは、婦人用ブーツに使われる非常に丈夫なものを選びました。その結果、ゴムが強すぎて、台になっている革の平らな部分を引っ張って曲げてしまうのです。(写真:Pen4lderの試作品(3))

 

もちろん、グイっと反対側に曲げれば、元に戻るのですが、それでいいってわけはないですし、納得もできませんでした。これは正直、困りました

 

ここで次の作戦に出ます。あらためて、工場と話し合って、ゴムの縫い方を変えようということになりました。それが現在の形状の基礎になっています。

 

一応、写真の形状は残したまま、上の半分のゴムだけ、現在の形状の基礎的な形を作り、再試作。ここまでで試作回数は4回となりました。工場の方に、「5回で終わるかな?」と言われました(笑)。


類似製品情報をネットで見る!

ここで、大事件が起こります。6月の下旬ころでした。何気なく、SNSなどを見ていたとき、見てしまったのです。当社のPen4lderと類似のコンセプトだろうと思われる製品を。。。それは、強豪の大手企業さんが限定ユーザーさん向けに開いたイベントで披露されたもののようでした。ガーンと頭を殴られたような気がしました。。。どうしよう、、、と頭を抱える一方、ここでやめることもできないなあとなりまして、一気に進んでしまおうと腹を決めました。

 

開発を加速してISOTに出展した

Pen4lderの形状変更試作(5)の写真
Pen4lderの形状変更試作(5)

ここで、最後の形状変更をしました。2カ所です。

 

ひとつは、台座部分の角をとることです。角を斜めにカットすることを決めました。はじめは写真のとおり、下の部分だけ角をカットしていましたが、最終的には上もカットし、上下左右がなくなるような形状に確定しました。

 

もうひとつは、ゴムの幅です。当初、試作では4cmの幅のゴムを2つ使っていましたが、もっと幅の広いゴムがあるということで、8cmのゴムを採用しました。これによって、ペンがガチっと固定されると同時に、隣のペンとの緩衝が減り、非常にいい具合になりました。

これには、飾り原稿用紙の監修者である小日向京さんにもご意見を頂戴しました。

 

そして、この形状で、ISOTに参考出品しました。

ISOTでは、そっと参考出品していたこともあって、手に取って「なるほどねぇ」という方もいれば、一方で、「なにこれ?」という方もいて、発売がとても不安になるという効果を得られました(爆)。発売は、この時点ではとにかく7月中ということで決めていました。

(一方、同時にペネックも参考出品していたのですが、こちらは納得できる形に7月中にならず、ずるずると開発が伸びておりました)

 

発売、そしてそれから

発売!

そして、いよいよ、発売されました。2017年7月26日のことです。2016年の11月に長崎でアイデアの種が生まれてから、足掛け9か月が過ぎていました。感慨ひとしおでした。色は、黒、紺、金、緑の4色で展開しました。台紙の素材は、山羊革。HIRATAINDERのTypeGと同じものにしました。

 

当初、ネットショップだけでの販売でしたが、2017年10月現在では、3つの小売店さんでも販売していただいています。

ありがたい反響

発売後、各色、予想よりお買い求めいただいており、本当にうれしい限りです。特に、緑(カーキ)はたくさん売れております。

また、「趣味の文具箱」などにも掲載いただき、読者の方から「どこで買えるのか」というお電話を頂戴したりいたしました。

ありがとうございます。

 

2017年10月現在、だいぶ、動きは落ち着きましたが、これからも廃番にするようなことなく、継続的に販売していきたいと思っています。

ユーザーの皆様におかれては、末永く使っていただくとともに、周囲の方に見せびらかしてより売れるようにご協力ください(笑)

 

ご購入は、スライド手帳のネットショップまで。